研究概要 |
1.再生組織力学試験装置の製作 共焦点レーザ顕微鏡上に設置することができ,細胞とコラーゲンゲルから作製した再生組織に張力を作用させながら組織および蛍光染色した細胞の観察を行うことのできる装置を製作した。試料の両端をカンチレバーで支持されたグリップで把持し,両端から同時に試料を引っ張ることにより,組織中央部が顕微鏡視野内から外れることなく組織を伸展させることが可能であった。カンチレバーのたわみ量をレーザ変位系で計測することにより,組織に作用する荷重を計測することが出来た。組織のひずみは,表面に付着させた標識を装置上方から撮像し,画像解析装置を用いて標識の変位を計測することによって計測することが可能であった。 2.再生組織内の細胞の観察手法の確立 細胞質をCell Tracker Orangeで,ミトコンドリアをMito Tracker Greenで重染色することによって,共焦点レーザ顕微鏡を用いてコラーゲンゲル内の線維芽細胞の形態とミトコンドリアを観察することが可能であった。 3.靱帯様再生コラーゲンマトリックスと内部の線維芽細胞内のひずみ計測 家兎前十字靱帯線維芽細胞を包含したコラーゲンゲルに引張負荷を作用させたときに,ゲルに生じたマクロなひずみと細胞内に生じたミクロなひずみとの関係を調べた。マクロな視点でみるとゲルには伸展方向にほぼ一様なひずみが生じていたが,内部のひずみ場は非常に複雑であり,局所的にみるとひずみの主方向は様々であった。また,ミトコンドリアを標識にして計測した細胞内微小ひずみの大きさは,ゲルに生じたひずみよりも大きい傾向があり,さらに,核領域に生じるひずみは細胞質に生じるひずみよりも小さいことを明らかにした。これらの結果は,組織再生時に作用させる負荷の大きさを決定するための,非常に重要な知見である。
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