研究分担者 |
矢口 俊之 東京電機大学, 理工学部, 助手 (70385483)
住倉 博仁 国立循環器病センター研究所, 先進医工学センター, リサーチフェロー (20433998)
福井 康裕 東京電機大学, 理工学部, 教授 (60112877)
福長 一義 杏林大学, 保健学部, 助教 (30366405)
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研究概要 |
本研究では,長期使用可能な人工肺の開発を目指し,そのアプローチとして細胞を組み込んだ人工臓器(ハイブリッド人工臓器)の基礎技術開発を目的とした.本年度は,生体組織に類似した微細繊維構造を紡糸する有効的な方法であるエレクトロスピニング法を用い,複雑な形状を有する人工臓器に対し,均一に繊維性の細胞足場(Scaffold)を堆積させ,目的部位にScaffoldを堆積させるシステムの構築を行った. Scaffold材料としてセグメント化ポリウレタンを使用し,任意に繊維の噴射方向を制御するため,電界の強さと繊維の噴射方向の関係を検討した.高分子溶液濃度14.5%,噴射距離15.0cm,印加電圧値7.0kVの条件下において,噴射距離間に様々な大きさの電界を加えることにより,噴射方向の制御が可能であり,目的部位へのScaffold構築が可能であった.また人工臓器表面に堆積したScaffoldは細胞外マトリックスに類似したナノからマイクロスケールの均一な繊維径を有していた.しかし,大気中の温度や湿度の影響から十分な再現性を得るには至らなかった. 次に実際の生体肺に掛かるせん断応力を考慮した上で評価用モデル肺を構築した.そして,その内面にScaffoldのコーティングを施し,正常ヒト臍帯静脈内皮細胞を播種させ,リアルタイムで細胞挙動の観察を行った.その結果,人工肺の流入口に掛かるせん断応力約10Paを加えても,Scaffoldの構造は変化せず,耐久性があることが実証された.また細胞の増殖能は静置培養と比較しても差が生じず,流動条件下でも十分に細胞が伸展,増殖することが確認された。 以上の検討により,組織工学と人工臓器の融合によるハイブリッド人工肺の実現に向けた基盤技術を形成することができ,in vivo評価にて,より詳細に検討していくことで長期使用可能な人工肺の開発が期待できると示唆された.
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