研究概要 |
骨重量は体重の15%に相当し,骨組織は脳や心肺など重要臓器を保護し筋肉運動を支え重力に抗して体移動を可能にする。骨は生きている組織であり,骨吸収・骨形成を伴い絶えずレモデリングされている。従来,骨カルシウム代謝やリモデリングの調節機構として,体液性因子のみが強調されてきたが,本研究は骨リモデリングの調節機序として交感神経性因子の役割を新たに調べることを目的とした。特に,本年度では(1)骨交感神経の形態学的同定,(2)骨交感神経活動の記録ならびに(3)骨交感神経の切除に対する骨リモデリングの変化に関する解析を試みた。その結果,麻酔ラットの腰部交感神経幹から発して大腿骨・膝関節に分布する交感神経を蛍光トレーサーとin-vivo蛍光顕微鏡を用いて明らかにすることができた。また骨は豊富な血管網を持ち毎分心拍出量の7%に相当する血流量を持つ。本研究は交感神経の刺激が骨血流量を減少させることを明らかにした。この所見は骨血行動態が交感神経の支配下にあることを意味する。次に,微細な骨交感神経束から神経活動の計測を試みたが,その記録には成功しなかった。一層の記録電極ならびに計測手法の改善を必要とする。腰部交感神経を切除すると,骨形成が抑制されることをX線骨画像システムを用いて明らかにした。以上の実験成績を総合的に判断すると,骨交感神経系は骨リモデリングの調節機序として重要な役割を持つことが判明した。
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