本研究では、生体内の神経系と外部機器を直接接続し、外部機器を制御することのできる神経インターフェイス構築のための基礎的研究として新しい電極と計測方法を検討した。本研究では神経信号用電極として静電容量結合電極を用いる。静電容量結合電極は導電体が絶縁体で覆われている。神経内部の信号源と絶縁体を隔てた導電体の間にコンデンサを形成することで神経信号位を導出する。 まず神経信号と同じ生体内心電図計測を行い電極材料の決定を行った。結果、銅箔を電極材料として採用することとした。また、絶縁体に関しては生体適合性に優れ、かつ容易に加工することができるシリコーンゴムを絶縁体に採用することとした。 次に静電容量結合電極による神経信号計測原理モデルを構築し、シミュレーション実験を行った。シミュレーション結果から計測回路内のオペアンプの入力抵抗値が十分に大きく、オペアンプの入力容量値が十分に小さいと仮定すると計測が十分可能であることが示された。 最後に静電容量結合型電極をラットの坐骨神経束に設置し神経信号導出実験を行った。ラットの足部末端を絶縁したカセンサ付きピンセットにより圧迫刺激し、計測システムで神経信号を計測する。また、実験用に製作した電極はシリコーンゴム母材を含め8×30[mm]、厚さ1[mm]程度となった。数種の大きさの電極での試みるつもりであったが、露出できた坐骨神経束の大きさから上記1種類での計測実験を実施することとした。計測データからは刺激の開始と終了付近で計測された波形に変化が見られた。計測された波形は回路の増幅率や一般的な神経信号の振幅などから十分神経信号とみなせる大きさであり、静電容量結合電極を用いた神経信号計測の可能性が示唆できた。
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