研究概要 |
我々は,各種食品抽出液の還元活性を複数の異なるクロマトグラムを組み合わせて分析し,その還元物質の単離同定を進める過程で,従来のHPLCによるカテキンやポリフェノールの分析とは異なり,複数のクロマトにより得られる多次元分画の活性を測定することにより物質(活性)を個々の物理的化学的正常の違いに基づき多次元平面上にピークが重ならないようにばら蒔く(ディスプレイ)することが可能であることを見出し,Functional Display Chromatography(FDC)と命名した。特に還元物質について,2種のクロマトの組み合わせと,2次元分画の還元活性の測定により得られるFDCを2次元レドグラムと命名し,これにより試料中の還元物質の全体像を網羅的に解析可能であることを実証した。この解析法を生物資源全般に網羅的に応用するためには,2次元レドグラムの工程のハイスループット化がは不可欠である。リキッドハンドラーシステムとインジェクションキットの購入と,クロマトカラムの種類やサイズ,流速,グラジエントの条件,溶媒の内容などを詳細に検討を行い,予算の規模内で可能な限りの2次元目のハイスループット化に成功した。これにより従来,手作業で行っていた2次元レドグラムでは1検体の解析に数カ月を要していたが,今回は中等度の解析精度ながら,1検体当たり約5日で解析が終了することが可能となった。この方法を,漢方生薬や食品の廃棄部分やワインに含まれる抗酸化物質のプロファイリングに応用したところ,従来,柑橘類において廃棄されている部分に複数の強い還元活性を見出した。さらに,ワインに含まれる抗酸化物質のプロファイリングでは産地、ぶどう種毎に異なるパターンが得られ,これまで専門家の主観的なテイスティングに頼っていた,ワイン類のテロワールや産地の同定を科学的に客観的に行う可能性が見えてきた。尚,本方法は四国TLOの指導の下,特許出願中である。
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