研究概要 |
人が豊かに生きることの意味を捉えるには,チクセントミハイのいうフロー経験という観点から人の行為を観ることも大切である.人は楽しむことを好み,そういう性向を解放してやることではじめて,豊かな生活を送ることができる.そして子どもにとっての最初のフロー経験は遊びである.この遊びは,大人の遊びとは全く異質なものなのにもかかわらず,子どもの遊びを彼らの成長の中に捉え,遊び場を設計するのは大人であり,大人の遊び観が子どもの遊びの楽しさを奪ってしまうことも考えられる. 本研究では,地域環境教育の一つとして取り上げられる子どもの参加による地域づくりの基点を,子どもの遊びにおき,冒険遊び場を核とした学社融合型の教育プログラムを構築するために,地域の大人たちの遊びの支援についての合意を促すゲーミングをデザインした.ここでは,大人たちが子どもの遊びの意味への気づき,そして子どもの遊びが教育としてどう組み込まれていくべきかについて,子どもによる遊びを遠くから観察しながら討議する(子どもの遊び場づくりゲーミング).この討議内容の分析(プロトコル分析)を通してこのゲーミングの有効性評価を試みた.ゲーミング実験は2007年9月に実施し,参加した大人たちは,行政(公園課担当),教育関係(小学校教員),NPO(冒険遊び場),および大学研究者(子ども教育),参加した子どもたちは小学4年生である.教育的配慮のある遊び,リスクのない安全な遊びを強く推進することへの危惧,異年齢間での遊びを促す地域社会の構築,生態系とのふれあいを重視した遊びの支援など,子どもの遊びを捉える立場が大きく異なる大人たちに,一定の方向性を持つ態度変容が確認された. ゲーミングを心理療法や教育的手法に留めず,環境教育のありかたに関する合意の形成に役立つ可能性を指摘したことが学問上の大きな成果と言える。
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