研究概要 |
本研究の目的は,宇宙に対する夢が持てるような電波科学に関する科学教育の題材として,比較的安価なアマチュア無線用の機器を用いて,月面からの電波エコーを子供達に実際に聞かせる出前授業の実現を目指すことである。19年度は, パラボラアンテナ製作の経験を積むため,まず直径1mの小型アンテナを製作し太陽電波受信実験,放送衛星電波受信実験を行った。次に直径2mのパラボラアンテナの製作を行ない,大型アンテナを使用する他のアマチュア局の月面エコーを受信することに成功した。また市販のアンテナ駆動装置は、角度表示がアナログメータである精度が不足し,1296MHz帯で月を追尾することが困難であるとわかりマイコンを使って角度を読みとってモータを制御する追尾装置を製作した。また市販の月軌道計算プログラムは、その表示が専門知識を持たない小学生にはわかりにくいと思われたので、月の軌道計算プログラムを自作した。1296MHz帯で出力200Wの送信設備の動作試験と低雑音受信アンプの動作試験を行い期待した性能が得られた。最後に200Wの電波発射に必要な免許申請は,移動しないアマチュア局として申請を行なう必要があるが,出前授業をする学校毎に免許申請を行なうことは申請費用の面から不可能とわかり,福井高専で免許を受けて電波科学に興味を持つ児童生徒を招待してエコー受信実験を体験させる方法に変更せざるを得なくなった。福井高専で設置できるアンテナは最大で直径3mが限界であるため,2年間のうちに1296Mz帯で自局の月面エコーを聞くことができなかった。そこで年度末に技術的にはやや厳しいが3mのアンテナでエコーを聞ける可能性のある5760MHz帯用の無線設備を購入した。今後5760MHz帯でのエコー受信実験を行う予定である。
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