研究課題
萌芽研究
遺跡の発掘調査にともない出土する木製品や自然木は通常、出土木材と呼ばれている。長い年月にわたり土中に埋没している間に、木材自身は著しく腐朽している。そのため腐朽して流出した木材細胞壁成分は水と入れ替わり、非常に高い含水率状態で発見される場合がほとんどである。こうした出土木材をひとたび乾燥させてしまえば、脆弱な細胞壁は水分蒸発にともなう乾燥応力に耐えられずに変形・収縮を起こし、再び元の形状に戻すことはできない。本研究の目的は、凍結乾燥後は繊維状の多孔質体となるセルロース誘導体を用いて、細胞内こうを支えることにより変形・収縮を抑制し、軽くて丈夫な出土木材を作り出すことである。実験ではメイセラーゼ処理により低分子量のセルロース誘導体を調製したのち、これを用いて最大含水率が312%のスギ材および588%のクリ材を処理した。真空凍結法により乾燥したスギ試料の内こうに多孔質体の形成を確認した。しかしながら、いずれの試料でも空隙充填率が10%程度と低かったことから乾燥時にスギで0.5-3%程度、クリで3-7%程度の寸法変化が認められた。今後はより低分子量のセルロース誘導体を用いることや保存処理濃度を増すことにより細胞内こうの変形・収縮が抑制できるもとの考える。
すべて 2007
すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (5件)
木材保存 33・2
ページ: 63-72
10018909444
Non-destructive evaluation for wood and woody mate rials for development new functional wood-based materials (eds : K.Takata, P.Kitin) (Institute of Wood Technology, Akita Prefectural University)
ページ: 189-197