透過電子顕微鏡(TEM)内での酸化および還元反応について、種々の実験を遂行した。反応ガスには主に酸素を使う固体無機反応実験を行った。 1)低融点金属の錫(Sn)とビスマス(Bi)の液滴の酸化還元反応をその場観察した。Snナノ液滴においては、固体の酸化では見られなかった酸化膜が液滴内部に層状の結晶となって成長していくことが観察された。この層状の酸化膜は、高温では安定であるが、低温では電子線の照射の影響でアモルファス化が生じ、不安定であった。Biの液滴では酸素ガスの導入でウィスカー状の酸化物が液滴の根元に成長し、還元雰囲気では逆に収縮することが観察された。このような酸化物の成長は固体のSnやBiでは見られなかった。 2)アルミナに担持されたAgおよびCuの微粒子を加熱し、酸素を導入するとそれらの金属の再微粒子化が生じることが観察された。3)シリコン基板上に微粒子銅酸化物を蒸着で形成し、酸素を導入せずに基板を加熱しても、ウィスカーが成長した。このウィスカーはEELSおよび高分解能電顕観察からSiO_2であることが確認された。酸化銅の触媒作用で約1000℃で酸化物ウィスカーが形成されると推察される。 また、水素吸蔵合金において、TEM内で水素の放出過程を観察した。マグネシウム基ナノ構造合金をTEM内でその場加熱して、水素放出過程をEELSスペクトルの水素プラズモンによる元素マッピングによって可視化することに成功した。ナノ結晶の粗大化が合金の劣化に影響することが分かった。
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