研究概要 |
本研究では,長周期地震動によって上水貯水槽の水がスロッシング現象を起こし,強制引水を開始する条件をまず明らかにし,つぎに,同時に多くの貯水槽が強制引水を行ったときに上水道システムに及ぼす影響を検討し,さらに,救命ライフラインといわれる消火,医療給水に及ぼす影響を検討することを目的としている。 2007年には3月に能登半島地震が,7月に新潟県中越沖地震が発生したので,地震における上水道システムの異常挙動を把握するために,全国の大規模水道局23局に対してアンケート調査を実施した。回収率は83%であり,6水道局において地震直後の流量増加と水圧低下が起こっていたことが明らかとなった。これらの水道局の近くの強震記録を収集し地震動特性について解析したところ,1秒以上の長周期成分が卓越していたことが明らかになった。つぎに,・貯水槽模型を用いたスロッシングの振動実験を行った。すなわち,水深を変化させながら水を満たした貯水槽を起振機に載せ,長周期地震動波形を用いて加振し,スロッシング高さを計測した。ここでは,周期特性とともに地震動継続時間にも注目し,長継続時間とスロッシング高さの関係を明らかにした。さらに,貯水槽の大きさに関する実態調査を大阪市において実施し,そのデータをもとに,モンテカルロシミュレーションを用いた管網計算により,異常挙動時の配水量を解析するとともに,南海、東南海地震について予測地震動を利用して水道供給システムへの影響を分析し,海溝型巨大地震による配水システムへの影響を分析し,さらに異常挙動の被害低減に向けた提案も行った。
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