研究概要 |
筋肉の成分のひとつである骨を動かす骨格筋は,多数の細胞が融合してできた巨大な多核細胞からできている.骨格筋の主要タンパク質であるミオシンはアクチンと同様の収縮タンパク質に分類される.また骨格筋に特有な収縮構造の筋原線維は,ミオシンとアクチンの二収縮タンパク質,つまりミオシン‐アクチンの複合体で存在する.しかしながら,このミオシン-アクチン複合体にATPを加えると,ADPへの加水分解を伴いながら複合体の解離を引き起こし,大きな高次構造変化をもたらす.このメカニズムに対する研究はこれまでに多くの研究が報告されてきたが,一方でこのメカニズムをコントロールする研究はなされてこなかった.それは,ATP加水分解を制御する適当な薬理試薬が存在していなかったからである.そこで,本申請研究ではミオシンと強力に相互作用する新規有機化合物を海洋生物に求め,探索研究を行うことにした. 本年度は,昨年度立ち上げたミオシン‐ATPase活性試験を用いて海洋生物アメフラシの抽出物に対し同活性試験を指標として探索実験を行った.いくつかの活性フラクションが得られたが,ミオシン‐ATPase活性を有する化合物の単離には至らなかった.しかしながら,その過程において新奇な骨格を有する細胞毒性アルカロイドAplaminalを単離,構造決定した.現在この化合物のさらなる生物活性試験,特にミオシン‐ATPase活性試験を行うために合成研究を行っている.
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