研究概要 |
本研究では,細胞内のコレステロール動態を追跡する蛍光プローブを開発し,コレステロールの機能を可視化して評価する目的で以下の課題を設定した。 課題1)生体膜トラップ型プローブの開発 課題2)酸性環境でエキシマー効果を出す生体膜通過型プローブの開発 課題3)生体膜でリン脂質とコレステロールの会合と解離を測定するプローブの開発 コレステロール本来の性質を保持したプローブとして,dansyl基の付加位置が異なる3種類のdansyl-cholesterolと,ケイ素導入,非導入2種類のpyrene-cholesterolを作成した(特願2007-075414)。Dansyl-cholesterolは親水-疎水環境に応じて蛍光スペクトルが変化し,膜コレステロール含量が少ないと長波長(緑)に,多いと短波長(青)にシフトするので蛍光発色から膜コレステロール含量を推測できることを確認した(特願2007-110515)。更にdansyl-cholesterol(20)は活性化マクロファージで生ずる脂肪滴に輸送されるが,小胞体ERに局在するエステル化酵素ACATのインヒビターSandoz58-035存在下ではその脂肪滴輸送が阻害され,ERに留まる像として観察できた。また,ケイ素を結合させたSi-pyrene-cholesterolは非Si型pyrene-cholesterolに比べて蛍光強度が3倍近く増強した(特願2007-075377)。Pyrene付加コレステロールとpyrene付加リン脂質は会合するとエキシマー効果を呈し,発光波長が長波長側にシフトした。更に,pyreneと同族のperyleneを付加したコレステロールプローブを作成し,このプローブでマクロファージを標識すると,細胞はSi-pyrene-cholesterolよりもさらに強く発光した(特許出願中)。
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