研究課題
萌芽研究
本研究において、多様化のすすむ19世紀中葉のアメリカ合衆国における文学と科学の接点を、進化論的言説の受容と動物表象の関係において考察しようとした。19世紀中葉がら活発になっていく進化論的言説の生成とそのアメリカでの受容についてまずあきらかにした。また、文学作品において、進化論的言説への賛否が微妙に動物描写に反映されている点が確認できた。ダーウィニズム以前の進化論における擬人化される動植物にこめちれた意味にういて考察することで、種という概念と人種という捉え方の相関関係に科学と文学の接点が見出された。この点を論証するため、まず、進化論的言説の受容を研究し、エマソンのエッセイ「自然論」に注目し、エマソンの科学に対する興味と理解について検討した。この成果を、エマソン学会・ホーソーン学会・ポー学会共催の国際学会において発表した。エマソンは、ダーウィニズム以前の進化論を受容し、また大西洋を渡って交流した人々、そこでの自然から進化論的な表現を見出していった点を明らかにした。この発表・及びハンティントンライブラリーで調査した結果をもとに、エマソンの進化論的な自然観が動植物への共感を基点として、イギリスでの体験からえた科学と宗教との相克から、人間肯定的なものに辿りついていく様が論文としてまとめた。この論文は『英文学研究(英文号)』(2007年3月)に掲載された。これらの研究により、進化論的言説のなかにある人間中心的な視点も一方であきらかになり、神話的な世界との関連、そこでの動物表象の問題、また、人間の認識を中心としたライフ・ワールド的生活圏の構築の問題などの視点もえられ、これらをメルヴィルの『クラレル』を中心に考察することとし、2007年8月に開かれるメルヴィル国際学会での発表として採択された。
すべて 2007
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英文学研究(英文号)(Studies in English Literature, English Number) 48
ページ: 21-39
110008154580