研究概要 |
中国内蒙古自治区を中心に使用されるモンゴル民族固有の伝統的文字(ここではウイグル・モンゴル文字と呼ぶことにする)は,縦書きで右へ行を進める特殊な書式をとるため,それの入力を日本語ウィンドウズ環境において日本語ワープロ上での日本語文字と共存させる形で,原稿作成(ここではモンゴル族向け日本語教科書作成)を行いうるかどうかを調査・研究した。なお,本研究ではソフト開発が目的ではないので,通常の日本語版ウィンドウズ・パソコン使用においてウイグル・モンゴル文字と日本語の入力による原稿作成ができることを実践的に検証した。また,実際にウイグル・モンゴル文字使用者のための日本語教材を作成・発行することも目的に含めた。 中国内蒙古自治区での現地調査を通して,中国語版ウィンドウズ上で正常に作動するモンゴル語IME及びフォントがあることが分かった。店頭などでの通常の購入方法が困難なものであった。メーカーでの直接交渉を経て入手した。しかしIMEは起動にパスワード設定等厳しい規制があり,日本語ワープロでは作動しない(メーカーの説明)など汎用性の乏しいことが分かった。ただし,フォント自体には著作権法上の制限が特にないことになっており,日本語ワープロ上において利用が可能である。様々な運用の試行を重ねた結果,いくつかの手順を経て,日本語ワープロ上で日本語文字とウイグル・モンゴル文字とを共存させた格好で,モンゴル族向けの日本語教材の原稿として作成することが達成できた。これは所属機関発行元で少数部数刊行した。さらに,日中間の国際交流の一環として,内蒙古教育出版社(中国内蒙古自治区)から中国においてモンゴル族向けの教科書としてて出版することが内定している(平成20年度国際交流基金日本語国際センター制作事業課日本語教材制作支援・寄贈事業日本語教材制作助成による・邦題名『新日本語教科書』)。
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