研究概要 |
ロシアの職業分類に関する研究は,我が国においては皆無といってよい状況である。本研究では,ロシアの職業分類,特に旧ソ連時代から現在に至るまで利用されている全ロシア労働者職業・職員職務・賃金表分類(Obshcherossiiskii Klassifikator Professii Rabochikh,Dolzhnostei Sluzhashchikh i Tarifnykh Razriadov:以後,OKPDTRと略称)の生成史を解明すると共に,その具体的な運用が現在のロシア経済に与える影響を観察してきた。まさに,この研究は,我が国のロシア研究にあって,先駆的な研究になったと自負している。 この職業分類(OKPDTR)の生成史を,旧ソ連のテーラー主義導入および統一賃金表作成の歴史に求めるとともに,ロシアの国勢調査のなかで使われている職業分類を調査することで解明した。同時に,極端な職業の細分化によって,現在のロシア企業の人事管理や公共職業安定行政にどのような影響が現れるか,ロシアの市場経済化にともなって生じるべき「仕事の世界」の変容に対しどのように阻害要因となったか,などを,ヴォロネジ州国家雇用センターで得た詳細な職業別求人・求職データやヴォロネジ鉄橋社における企業調査において得た賃率表などを駆使して研究を進めた。 その成果は,ロシアの近年の職業構造の変化とともに分析した輪文「変化するロシアの職業構造」(『富大経済論集』第53巻第3号所収),およびロジアの職業分類(OKPDTR)の生成・発展および近年の改訂の歴史とともにヴォロネジ鉄橋社の賃率表をもとにした分析を披露した研究発表「ロシアの労働と職業の変容」(一橋大学経済研究所特別コンファレンス:2008年3月15日)において公表された。
|