研究概要 |
本研究は、擬態語による性格記述の特徴と機能を明らかにし、擬態語の特色を活かした性格評定尺度を構成しようとするものである。20年度中の実績は以下の通りである。 1. 擬態語リストの整理と尺度構成<S系統>:平成19年度までに作成した自己評定用尺度をさらに発展させて、自己評定用としても他者評定用としても共通で使用できる擬態語性格尺度(各々10語からなる6尺度、計60語)を完成させた(小松他,未発表)。 2. 擬態語と非擬態語の比較<E系統>:以下の結果が得られた。(1)擬態語では、自己参照効果(ある語が「自己の性格に当てはまるか」を判断させることで、その語の記憶成績が高まる現象)が生じにくい(西岡他,2008)。(2)特に否定的な意味内容を伝える場合に、擬態語表現が印象を和らげる場合がある(稲森他,2008)。(3)「自叙写真」(=「自分自身を表現する」目的で撮影された写真群)から撮影者の性格を推測する課題において、擬態語は撮影者の個性の違いを弁別する機能において非擬態語に劣らないにもかかわらず、評定の確信度が低い傾向がある(向山他,未発表)。以上(1)〜(3)より、擬態語は人の性格への当てはまり方が緩やかであり、対象者にとって侵襲的でないという特長を持つと考えられる。 3. 擬態語利用に関する実態調査<R系統>:(1)擬態語による自己評定と他者評定の比較(酒井他,2008)、(2)擬態語使用における地域差の検討(酒井他,未発表)を行った。 以上の知見を踏まえ、擬態語による性格記述の特徴に関する理論構築(Komatsu et al.,2008)を行うとともに、研究成果を論文化する作業に着手した。
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