1. ADHDもしくは高機能広汎性発達障害(以下PDD)をもつ中学生計9人のグループ指導を実施し、その中で障害をも含む自己意識を探っていった。ADHD児の中には、服薬やいじめ(被害、加害)の体験を互いに聞く中で、障害をより客観的に捉えられるようになる者もいた。しかし、PDD児では特に中学校入学直後に社会的な問題行動を生じる者がおり、そうした生徒では登校渋りや自尊感情の低下が見られた。問題行動のきっかけは小中移行期における他児からのいじめや理解不足が多かった。 2. 「岩手県立中央病院」において、いじめを受けた発達障害児の二次的症状について調査した(PSC日本語版健康調査票)。その結果、いじめを受けたADHD児やPDD児は回避的で孤独な心理状況に陥っていること、不登校への移行はPDD児が多く、二次的症状自体もPDD児の方がより深刻であることが示された。 3. 「岩手県立中央病院」において、「反抗挑戦性障害」の診断を受けたADHD児をもつ母親3名にインタヴュー調査を実施した。その結果、この障害の背景に保護者の精神疾患や子ども虐待などがあり、極めて二次障害的な要素が強いこと、医師や心理士による数年にわたる当事者と保護者への支援を経て改善したことなどがわかった。 4. 研究全体を通して、発達障害をもっ思春期の子どもの二次障害はすでに小学生段階に芽があること、特にいじめ被害への配慮が重要であること、また高リスクをもつ保護者への長期的な臨床心理支援が極めて重要であることなどが明らかになった。
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