研究概要 |
1. 代数統計への応用. (1)有限群論の応用として, 分割表の一致率検定のための正確確率法のアルゴリズムと_2F_0型超幾何多項式の積公式を得た(HMJの論文). (2)フィッシャーの並べ替え検定の置換群論的解釈. 対称群上のランダムウォーク(RW)から分割表のRW(生起確率は多項超幾何分布)が誘導されることを示した. (3)有限群上のRW. 周期分布への収束の速さが, 指標理論を使って評価できる. 例えば, 対称群の互換によるデータの入れ換えは, 2次元分割表に対する古典的なマルコフ連鎖モンテカルロ法(MCMC法)に対応しているが, 収束度(n-3)/(n-1)はかなり悪い. (n-1)サイクルを使うと, 収束度は2/(n-3)nと劇的に速くなる. Hecke環の表現を使うと, さらに良い評価が得られる. 論文作成中. (4)分割表生成にブートストラップ法を使うことは, 周辺分布が変わるためあまりない. しかしこの方法は対称半群を使ったFisherの並べ替え検定に対応することが分かった. 論文準備中. 2. 鉛同位体比の分析. 4種類の同位体があるので, 個々の製品に含まれる鉛は3次元単体に位置する. 2つの鉛の混合で得られる鉛は, もとの鉛を結んだ直線上にある. したがって, 鉛の同位体率は, 鉱山を頂点とする凸体の内部に位置する. 応用として青銅鏡に含まれる(椿井大塚山古墳出土鏡)の混合の過程の解明を行った. 鉛同位体比解析への数学(線形代数, 超平面配置や離散幾何凸体の幾何, 確率論, アファイン幾何など)の応用は今後が期待できる. 概要はCASTA 2008で発表した. 関連する論文は一般向けの歴史関係の雑誌にも投稿した(掲載決定). 3. その他, 比較言語学への応用, 有限群の表現論をマルコフ連鎖の研究に使うための, 確率論の記号などの整備を行った. これらは順次論文として公表予定である. もっとも一般的な立場として, 結合的概型上のランダムウォークが考えられる. 準備的論文を竹ヶ原氏との共著として公表した.
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