研究概要 |
電子スピン共鳴(ESR)は、電子スピンのダイナミクスを直接観測できる物性研究の強力な測定手段である。強相関電子系のESR研究は遅れていたが、最近、場の理論に基づく1次元量子スピン系のESR理論[1]などの新たな理論的手法が開発され、今まさに強相関系ESR研究が大きく展開しようとしている。昨年度は、我々が世界で初めて考案した有限温度強相関量子スピン系のESRスペクトルを直接数値計算する方法[2]を画像処理用言語Cgを用いてGPU(Graphics Processing Unit)を利用した SIMD(SingIe Instruction Many Data)型超並列計算機Heisenberg Machineへ移植した。その後、C言語に近く科学計算においてもGPUの性能をフルに引き出せる言語CUDAをNVIDIA社が発表したので、今年度は、Heisenberg Machine上でCUDAを用いて書いたESRスペクトル計算用プログラムを走らせるための準備として、古典N体問題用プログラムを走らせることに成功した。その結果、CUDAプログラムはCgプログラムの約20倍速いことが明らかになり[3]、ESRスペクトル計算用プログラムをCUDAに移植する基礎を築いた。 [1]Oshikawa and Affleck,Phys.Rev.Lett.82,5136(1999). [2]T.Iitaka,and T.Ebisuzaki,Phys.Rev.Lett.90,047203(2003). [3]T.Hamada and T.Iitaka,(astro-ph/0703100).http://uk.arxiv.org/abs/astro-ph/0703100
|