研究概要 |
本年度の実施研究計画に基づいて、以下の2種類の巨大ランタニド錯体について学術論文に報告できる精度のX線結晶構造解析を再度行い、総括的に研究をまとめた。 1)キラルな1,2-プロピレンジアミン-N,N,N',N',-四酢酸(pdta)を配位子とするランタニド錯体M^+[Ln(pdta)]-について、中心金属(Ln=La,Pr,Sm,Eu,Gd,Dy)および対カチオン(M^+=Na^+,K^+,Cs^+)を変えて系統的に結晶構造解析を行った。Pdta錯体では、LaとDy以外の金属イオンに対してカルボキシル基を介した3核コアを形成し、さらにカチオンを介して上下に重なった6量体を単位とする構造が形成することが明らかとなった。6量体構造は、結晶中ではカチオンを介して2次元平面状に広がった環状の分子集合体を形成する。ラセミpdta配位子とM=Na^+イオンの結晶では18量体であるが、M^+K^+イオンでは36量体、さらにキラルpdta配位子とM=Na^+イオンの組み合わせた結晶では48量体の環形成のため中心にナノサイズの大きな空洞が形成されることは判明した。 2)キラルなビス(2-ピリジルメチル)-1,2-エタンジイルビスアラニン(bpba)を配位子とする[Ln(bpba)]X^-錯体については、結合半径の大きいLa^+イオン以外は結晶化が困難であった。ハロゲンイオンをCl^-からBr^-に換えた場合2種類の結晶が析出した。結晶系が異なるがいずれも18量体クラスターを形成することが明らかになった。 国内外の色々な学会で上記の結果について発表し、今後の研究の発展性について議論した。なお、すべての構造結果は、結晶データベースへの登録を終了し学術論文へ投稿中である。
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