研究概要 |
150ns程度の長いナノ秒レーザーを液相中で固体表面に照射し,レーザーアブレーションさせたときに生成するプルームの発光分光によるターゲット表面のその場元素分析について,以下の2点について成果を得た。 (1)定量分析を目的とする場合,原子密度に比例した線スペクトル形状を得ることは重要である。照射波長はスペクトル形状に影響を及ぼすが,この原因に迫るためレーザーによるプルームの直接励起の効果を調べた。まず,レーザーをターゲット表面に対して垂直方向から照射したときのプルームの発光画像から発光強度の空間分布を系統的に調べ,パルス幅が長い場合に表面からより離れたところを中心に発光が分布することを明らかにした。さらに,角度をつけて照射した場合に発光領域が照射方向に偏る傾向を確認し,表面からの放出種が長いレーザーの後半部により直接励起されていることを明らかにした。 (2)さまざまな溶質が存在する溶液中で固体表面の元素組成分析の可能性を実証することを目的に,硫酸銅-硫酸亜鉛水溶液中でこの溶液から電解析出させた皮膜をターゲットとして,レーザーアブレーションプルームからの発光スペクトルを測定した。電解析出皮膜の銅・亜鉛組成比がさまざまに異なることが予想されるいくつかの電解電位を選んで白金板上に電解析出を行ったものをターゲットとしたところ,電解電位から予想される組成変化に対応した各元素のスペクトル強度比が得られることを示した。なお,スペクトル強度はパルスごとのばらつきが大きく定量分析に対する難点となることも明らかになった。
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