研究概要 |
昨年度の研究によって,(1)二重励起光音響分光法の基礎を確立し,測定装置の最適化を行った.(2)時間分解測定により,酸化チタン中に蓄積する電子の量およびこれらが酸素と反応する速度についての情報が得られることを明らかにした.本年度はとくに(2)についての検討に力点をおいて研究をすすめ,(a)メタノールなどの電子供与体存在下での二重励起条件(連続光をUV-LEDによる紫外光とする)における時間変化を追跡し,可視光に生じる蓄積電子(三価のチタンイオン)による吸収の飽和値を見つもる方法を確立した.これによって酸化チタンなどの光触媒中の結晶欠陥量の指標をえることができた.つぎに(b)いったん蓄積させた状態で紫外光照射を中止し,酸素との反応によって三価のチタンイオン種が消失する過程を追跡し,光触媒試料によるちがいを明らかにする.この消失速度は光触媒の還元能力と密接に関連していると考えられ,他の物性,特性との関係を明らかにした.これらの検討によって二重励起光音響分光法の有用性を示すとともに,光触媒の特性評価法の確立をした.さらに,光音響信号を周波数の関数として解析することにより,光触媒反応によって発生する熱を直接検出することに成功した.これは,従来の熱測定ではむずかしいものであり,酸素存在下での有機化合物の酸化反応のように発熱的な反応では検出されるが,水からの水素発生反応では検出されないことなどから,光触媒反応の解析に有用であると考えられる.
|