研究概要 |
凝縮系物質の巨視的物性とナノスケール相互作用領域のサイズおよび構造との相関は,未だ十分には解明されておらず,その解明には,よく構造制御された試料,よく定義された物性量の精密な測定データ,ならびに,それを系統的に整理するための新たな理論の構築が必要である。我々は,平成18年度の研究成果として,ナノポーラスアルミナ膜にチタン酸バリウム(BaTio_3)をスパッタ蒸着することによって,BaTiO_3ナノロッドが二次元的に配列したナノロッド、アレイ試料が生成することを見出した。本年度は,BaTiO_3ナノロッド、アレイの形成機構を明らかにするとともに,ナノロッド、アレイ試料の微視的構造の解明を進めた。その結果,成膜の初期過程において,BaTiO_3のスパッタ粒子がナノポーラスアルミナ膜の孔の縁に堆積してBaTiO_3ナノドットを形成し,ナノドットを核としてBaTiO_3の堆積が進行することにより,BaTiO_3ナノロッド、アレイが生成することを明らかにした。また,生成したナノロッド(直径〜200nm,軸長-1μM)は粒径10〜20nmのBaTiO_3ナノ結晶から構成される多結晶体であり,成膜時のアルミナ膜の温度を500〜700℃の範囲で制御することにより,結晶粒径のコントロールが可能であることを見出した。さらに,成膜後にアルカリ水溶液によってアルミナ膜を溶解してBaTiO_3ナノロッド、アレイ試料のみを取り出すことに成功し,ナノロッド、アレイ試料の誘電率測定を可能にした。また,理論的アプローチとして,Ornstein-Zernike型自由エネルギー汎関数を用いて,二次元面上のストライプ構造に対する次元規制効果の検討を行った。そして,いくつかの物理量が,相関距離を次元規制している特徴的な長さでスケーリング表記できることを見出し,転移温度に対する次元規制効果解析など,結晶表面物理への応用を試みた。
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