研究概要 |
これまで環境汚染物質を分解する触媒反応には、光触媒機能を有するセラミック材料等が用いられ、その効率は材料の種類に依存していた。昨今の様々な環境汚染物質の発生状況に対しては、新しい触媒材料の開発が不可欠である。そこで、触媒機能を活性化させるため、「自己伝播高温合成法(SHS法)」と爆薬による「衝撃超高圧」を原料の金属素粉末に作用させることで、新たなラネーニッケル合金の開発を目的とした。まず、NiとAlの両粉末を原料とし、Ni:Al=1:1、2:3、1:3(at比)の割合で秤量、湿式混合、乾燥したものを円柱状にプレス成形し、SHS法により多孔体を得た。また、これに続けて約5GPaの衝撃超高圧負荷実験(可塑性爆薬量:20〜40g)を組み合わせて高密度試料も得た。粉末X線回折実験の結果、生成相は超高圧負荷の有無に拘わらず、各系に妙してNiAl,Ni_2Al_3そして副生成物Ni_2Al_3を伴ったNiAl_3が検出された。これらを70℃のNaOH熱水溶液に約10〜20時間浸漬し、Alを溶出後ラネーニッケルとし、125〜250μmおよび125μm以下の2種類に分級した。これを水に懸濁させものをサンプル叛に1 ml分取後、41.2ppmの2,4,6-トリクロロフェノール(TCP)水溶液を50ml添加し攪絆続けながら、2,4,6,24,48時間後に水相を2mlづつ試験管に分取し、10分間、3000rpmの条件で遠心分離を行った。得られた上澄みを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定し、残留2,4,6-TCPの量を測定した。この結果、全試料において、粒径に拘わらず4時間までは2,4,6-TCPの濃度が急激に低下したが、それ以降48時聞までは微減であった。これは触媒内の水素が速やかに消費され、活性の低下が起きたためと考えられる。一方、衝撃負荷条件に依存し、40gの最大爆薬量で、また合成反応から起爆までの時間(1または3分後)が長いほど高活性を示した。以上のことから、より低い温度、かつ強く衝撃負荷をかけたものほど活性が向上することを明らかにした。これは衝撃負荷に伴う結晶格子へのひずみの導入と強い因果関係を示唆していた。
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