研究概要 |
本年度は,平成19・20年度に実施した「Al_2O_3表面へのコランダム単結晶皮膜のエピタキシャル成長」の更なる深化とともに,「その他の単結晶皮膜の作製と応用」に関する研究を推進し,フラックス蒸発エピタキシー(フラックス成膜)法の確立をめざした。 はじめに,フラックス蒸発法の成膜条件(特に保持温度と昇温時間)を制御し,さらに,フラックス(溶媒)中への基板投入のタイミングを調整することで,超ファイン成膜(高被覆再現性)を試みた。特に,サファイア(Al_2O_3)表面へのルビー(Al_2O_3:Cr)エピタキシャル成長の場合,高温保持段階に達したるつぼに基板を投入することで,昇温時の基板表面の溶解を抑制でき,きわめて微細な結晶薄膜作製を実現した。また,育成条件の中でも昇温速度と保持温度を増大することで,膜厚を数百μmから,数百nm〜数μm程度まで薄膜化することに成功した。この結果,さらなる細線再現性を実現できた。この条件を用いて,複雑な立体構造をもつアルミナ材料表面をルビー薄膜で一様に覆うサンプルも作製できた。 昨年度,さまざまな希土類元素や遷移金属元素を取り込んだAl_2O_3系結晶薄膜の作製に成功した。本年度は,環境浄化への応用をめざし,チタン酸ナトリウム結晶皮膜の作製を試みたところ,NaClフラックス蒸発法にて繊維状チタン酸ナトリウム結晶がサファイア(0001)基板表面に晶出する様子が観察された。この場合,繊維状チタン酸ナトリウム結晶が,サファイア{0001}面に起因した配向成長する様子(三角形の成長模様)が観察された。このチタン酸ナトリウム結晶は,光触媒特性や選択的吸着特性をもつこともわかった。
|