研究概要 |
(1)ゲルマニウム負イオン注入によるアナターゼ型二酸化チタン薄膜の光触媒効率の向上 ゾルゲル法で形成したガラス基板上のアナターゼ型二酸化チタン薄膜(3,000rpmで2分+熱処理500℃の工程を3回)にゲルマニウム負イオンを10keV (8.0×10^14ions/cm^2), 30keV (1.5×10^15ions/cm^2)そして65keV (3.0×10^15ions/cm^2)とGe濃度がいずれも約1at.%となる注入条件で注入を行い、表面下10〜45nm領域にGe原子を添加した。そして、窒素雰囲気中で300〜500℃、1時間の熱処理を行い、メチレンブルーの脱色反応により光触媒性能を評価した。光源としては365nm波長の紫外線ランプを用い、照射時間は19時間とした。その結果、ゲルマニウム負イオン注入したアナターゼ型二酸化チタン薄膜では、熱処理温度が高いほど光触媒効率は高く、未注入薄膜に比べて最大で3.5倍の効率が得られた。 (2)ゲルマニウム負イオン注入アナターゼ型二酸化チタン薄膜のカソードルミネッセンス アナターゼ薄膜にゲルマニウム負イオンを65,30,20,10keVの4種類のエネルギーで多重注入を行い、表面から深さ50nmの領域に均一なGe注入層を形成した。Ge濃度は1at.%と0.5at.%を作製し、カソードルミネッセンスを測定した結果、波長390nmにCLピークを観測し、800℃の熱処理後では高強度のCL発光(390nm)を観測した。酸素欠損(ODC)が発光中心と考えられる。 (3)ゲルマニウム負イオン注入二酸化シリコン薄膜からのルミネッセンス測定 Si基板上の二酸化シリコン薄膜にゲルマニウム負イオンの多重注入し、熱処理後に、カソードルミネッセンス、フォトルミネッセンスを測定した。その結果、波長390nmにCL発光及びPL発光が得られた。高強度のPLやCL発光は、注入濃度が1〜2at.%であった。次いで、ゲルマニウム注入二酸化シリコン薄膜に透明電極ITOを蒸着して裏面との間に電圧を印可し、エレクトロルミネッセンスを調べた結果、二酸化シリコン薄膜の膜厚が50nmと薄い場合に、青色のEL発光が得られた。EL発光の詳細測定は期限内では出来なかったが、印加電圧がAC32V(ピーク電圧44V)という低電圧でEL発光に成功した。
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