研究概要 |
20年度は,前年度までに導入したナノモーターを,18年度以前に所属機関で導入したSEMの鏡筒内せん断試験のマニュピュレーターとして用いる試みを行った.せん断試験試料にはポリスチレン粒子(平均粒径50ミクロン)を用い,粒子を1粒子分の厚さに敷き詰め,2方向からナノモーターに結合された金属板の移動による平面ひずみ2軸圧縮実験を鏡筒内のステージ上で行った.しかし,SEMの真空条件と電子線による荷電のために生じる粒子表面静電気の影響が非常に強く,砂粒子の乗り上げ等が容易に発生し,力学的に意味のある粒子運動を観測することは非常に困難であった.また,この影響で,ナノモーターが直結されたせん断箱壁面でのひずみ計測も系統的なデータを得ることができなかった. 同試験をSEM外で行う場合では,ナノモーターの最大ストローク程度の変位では,砂粒子の乗り上げや飛散は観察されなかったことから,SEMの電子線の影響であることは間違いないことだけは確認できた.ここで課題となった問題について,日立製作所のSEM内マニュピュレーションの専門家などと検討を重ねたが,1)微粒子を1層に敷き詰めた条件下での平面ひずみ試験は困難であること,2)SEMのチャージに不活性な材料でない限り,微粒子表面には静電気力などの不確定な力学的吸引力が生じることは現在の技術では克服する方法が見当たらなかった. そこで,20年度後半からは,1)上記試験を光学顕微鏡下でナノモーターマニュピュレートによって行う実験装置の組み立て,2)エアーホッケーゲーム機と多数のエボナイト多角形板と高速ビデオカメラを利用した2次元平面せん断試験装置を組み立て,現在,動作確認中である.
|