研究概要 |
本研究の目的は, 流体存在下においても高摩擦を示す新しいエラストマー系複合材料を開発することである. 平成19年度までの研究結果により, NBR(アクリロニトリルブタジエンゴム)にRBセラミックス粒子を配合することにより, 水潤滑下において高い摩擦が得られること, そして, そのための好適なRBセラミックス粒子の配合率, 平均粒径, ベースゴムのショア硬度などが明らかにされている. そこで, 平成20年度では, これまでの研究で高摩擦を示した平均粒径300μmのRBセラミックス粒子を5wt%配合したショア硬度58HSのNBRについて,直径4mmの高炭素クロム軸受鋼球(JIS SUJ2)を用いて摩擦試験を行い, 耐摩耗性の評価を行った. 実験は, 垂直荷重1.98N, すべり速度0.01m/s, 摩擦繰返し数1,000回, 大気中無潤滑下で行われた. その結果, 同NBR/RBセラミックス複合材料は, NBR単体に比べ, 1/5の比摩耗量を示すことが判った. 摩耗面の光学顕微鏡観察より, NBR単体では, ゴム表面の大規模な流動が観察されたのに対して, NBR/RBセラミックス複合材料では, 大規模な流動は観察されず, またRBセラミックス粒子の脱落も見られなかった. これは, 摩擦によるゴムの流動を硬質なRBセラミックスが抑制し, また, RBセラミックス粒子の気孔部分にゴムが入り込むことによるアンカー効果によって, 粒子の脱落が抑制されたためと考えられる. 以上のことから, 本研究で開発されたNBR/RBセラミックス複合材料は, 流体存在下において高い摩擦係数を示し, かつ耐摩耗性にも優れることが明らかにされた.
|