研究概要 |
マイクロ波集積回路用集積化インダクタの性能指数Q値を高めるため、高周波抵抗増大の主因である表皮効果そのものを抑制することを試みた.磁性薄膜の透磁率が負であるような強磁性共鳴周波数以上の帯域において、コイル導体の構成を一般的なメタル導体と薄い磁性薄膜との積層構造とし,かつ導体層と磁性層の透磁率の体積平均値が零になればよいとの考えのもと、試作検証を行った。 まずコプレーナ型伝送線路をメタルー磁性体積層薄膜(A1/NIFe)で作製し,0.1〜40GHz帯で等価回路解析を行った。外部磁界を印加しながら抵抗値を測定すると、周波数に対して抵抗が減少するような周波数帯が10〜30GHz程度において認められ,その周波数帯は外部磁界が強いほど高周波数側に移動し,更にその移動量は計算値とほぼ一致することが明らかになった。すなわちWiMAX等で民生応用が期待される高周波帯に適合した表皮抵抗抑制法を新しく見出すことができた。これは重要な成果である. 続いて、6GHzにおける使用を前提にCu/CoNbZrから成るスパイラルインダクタを設計した。CuとCoNbZrの膜厚比を1:3に定め、系統的な電磁界シミュレーションによって具体的な膜厚を定めた。また使用帯域における自己共振を避ける目的から、自己共振周波数を17.5GHzに設計した。製膜はCuとCoNbZrを同一チャンバ内で交互に行い、各層表面の酸化を予防した。スパイラルコイル形状への微細加工はリフトオフ法に拠り、次いでSi02層を介して引出線を設け、2端子対構造を完成させた。その結果、スパイラルインダクタにおいても表皮効果抑制が可能であり、高Q化が実現できる見通しを得ることができた。
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