研究概要 |
本研究はディジタルゴーストモデルに基づくマルチメディア用電子透かし方式を新たに提案し、その基本特性を理論と実験の両面から確認することを目的としている。本研究で得られた新たな知見等の成果は次の通りである。 (1)ケプストラムを利用してディジタルゴースト画像から遅延検出を効果的に行う方法について性能比較を行った。まず、ゼロ挿入法(zero padding)を導入した場合の効果を調べた。その結果、時間領域の画像信号に対してはゼロ挿入法の効果がほとんどみられなかった。一方、DCT(離散コサイン変換)領域での無相関化された信号に対してはゼロ挿入法の効果が有意に現れた。例えば、人物画像では透かし検出時の誤り率(BER)が7%程度下がった。 (2)次に、異なる相関値の2次元AR画像(画素間相関値=0.90,0.75,0.50)に対して透かし検出時のBER特性を調べた。その際、DCT領域での透かし入り信号にゼロ挿入処理を行った後に、ケプストラム検出係数を計算した。その結果、SNRが40[dB]程度である透かし入り画像のBERの値は拡散系列の許容誤り率(35〜40[%])未満であった。このことから、提案方式は低い画素間相関値(例えば、0.5程度)の画像に対しても有効であると考えられる。 (3)更に、上記(2)の2次元AR画像に透かし情報を埋め込んだ後、基本的な攻撃(白色雑音付加、75[%]の切取り処理、JPEG2000圧縮)を加えて耐性実験を行った。その結果、各攻撃に対して良い耐性を持つことがわかった。 (4)研究成果の一部を学術的な会議で発表すると共に、電子透かし技術および拡散系列に関する最新の資料を収集するために国内旅行を行った。
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