研究概要 |
本研究は,ナノパルスプラズマを利用した大気圧下でのDLC膜の合成法を開発して、高効率・高性能なDNA固定分析チップを作製することを目的とするものである。まず高分解能発光分光分析システムを構築し,時間分解能1ns程度のフォトダイオードユニットを用いてプラズマの発光分光分析を行い,存在する化学種はH,CH,C2が中心であること及びその発光寿命は700nsのパルス幅のナノパルスを印加後20us程度であることを明らかにした.また発光強度はナノパルスの場合にマイクロパルスと比較して10倍程度大きく,原料ガスの解離の進んでいることが示唆される.さらに,基板のスキャンを導入することにより長さ20mm程度の基板上にDLCを大気圧下で合成することの出来ることを示した.また,オージェ電子分光分析の結果,DLCにはNやOといった不純物の巻き込みもなくまた電極材料(Fe等)も含まれていないことがわかった.以上の結果から,大気圧下でナノパルスプラズマCVD法により走査しながらDLC膜を合成する技術を確立することができた.さらに,この表面にDNA(HPLCアミノ化Fluorescein)を固定し,蛍光顕微鏡による観察を行った.その結果,大気圧で合成したDLCにおいても従来の低圧下で合成したDLCと同密度のDNAを固定できることがわかった(現在のところ蛍光画像の目視観察による).このことから,本研究によりナノパルスプラズマを用いることにより,DNA固定用のDLCコーティングを大気圧下で行う技術を確立できたと結論される.
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