研究概要 |
10員環ミクロ孔をもつMWW型ゼオライトは,ヘキサメチレンイミン(HMI)を構造規定剤とした水熱合成で得られるMWW層状前駆体[MWW(P)]を焼成することで層間のシラノールの脱水縮合を経て得られる。このような層状前駆体-ゼオライトの関係は数種類知られており,新たなゼオライト触媒の調製法として注目されている。本研究ではおもにMWW(P)の層間へのシリル化を行い,MWW構造の層間が拡張した固体酸触媒を調製し,またその固体酸触媒特性について検討を行った。 MWW(P)のシリル化条件を検討したところ,0.1〜1.0Nの硝酸を溶媒として酸性条件下では層間シリル化が容易に進行することがわかった。いっぽう,弱塩基性であるアンモニア水溶液中ではほとんどシリル化が進行せず,また強塩基性である有機アンモニウム水酸化物の水溶液では,MWW構造が壊れてしまい,層間が拡張した構造を得ることができなかった。これは酸性条件においてのみ,MWW層間に存在するHMI分子を除去することができたことと相関していると考えられる。このようにして層間拡張して12員環ミクロ孔をもつ新規ゼオライト構造をinterlayer-expanded MWW(ILE-MWW)と名づけた。このILE-MWWを固体酸触媒として無水酢酸によるアニソールのアシル化を行った。MWWでは300分後でも10%の低い収率でありたのに対して,ILE・MWWでは収率35%に達し,12員環ミクロ孔を有するゼオライトベータに匹敵する活性を示した。この活性の向上は,シリル化した試料では拡張した層間内での反応物・生成物分子が拡散しやすくなったために起きたと考えられる。 ほかのゼオライト層状前駆体としてPREFER,PLS-1,RUB-39のそれぞれについて,層間シリル化条件を検討したところ,各層状前駆体からミクロ孔が拡張した新規ゼオライト構造を調製できることを見出した。ただし,調製後の試料は必ずしも熱的安定性に優れていない場合もあり,さらなる処理条件の検討が必要である。
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