研究概要 |
大腸菌ファージT2頭殻表層に抗原タンパク質を提示したファージワクチンを分子構築し、マウスを用いた動物実験を実施した。研究対象とした抗原タンパク質はSalmonellaの鞭毛タンパク質FliC(H1抗原)とFljB(H2抗原)である。T2ファージ頭殻タンパク質の一つであるSOCをコードするsoc遺伝子下流にβ-galactosidase遺伝子を持つT2βファージは青色のプラークを形成する。FliCとFljBをコードする遺伝子をsoc周辺遺伝子を含むプラスミドに挿入し、これらプラスミドによる形質転換体大腸菌にT2βファージを感染させ、相同組換によりSOCとFliCまたはFljBを共発現するキメラファージ(ワクチン)を分子構築した。これらファージワクチンを用い、以下の実験を行った。実験系(4系列、各系列に6匹のマウスを使用) A: 非投与群(ネガティブコントロール) B: 精製タンパク質投与群 C: ファージワクチン投与群 D: ファージワクチンと宿主大腸菌投与群 C,D群では投与したファージワクチンがマウス糞便に検出されたが、投与5日以降は検出されなかった。糞便に含まれる抗原特異的IgA産生量をELISA法により定量した。B,C,D群からFlicとFljB特異的IgA産生が認められ、そのタイターはB、C群で同等だった。ファージ提示型抗原タンパク質量はB群に投与した精製タンパク質量の1%以下であるが、B群と同等の抗体産生能を示したことからファージ提示型抗原がワクチンとして利用できることが示された。
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