研究概要 |
本研究では光の圧力を用いるプロペラントレスのエネルギー直接変換型宇宙推進の研究を行っている。初歩的ではあるが,電源からエネルギーを準黒体輻射源に供給し、光束の形で運動量を放出させ、その推力を計測することから開始,準黒体輻射源としてタングステンフィラメントを用いた。エンジン内部のノズルで光を反射し平行光に近づけるいわゆる放物面ミラーを採用,その焦点位置にタングステンフィラメントを固定する。フィラメントは最高2,500Kまでとし,蒸発量を抑制した。推力計測は申請者等が独自に開発した微小推力測定用の「ねじり式推力スタンド」で行った。本実験では、ワイヤーでバランスしてアームの一方に金属箔を光圧力を受ける形で吊るし、ワイヤーのねじり復元力と釣り合う際のねじり回転変位をレーザー変位計によって計測できるように構成した。推力のキャリブレーションはこれも申請者等が独自に開発した帯電による金属箔の反発力を利用した方法で既知の微弱静電気の力を発生して行った。その結果、「ねじり式推力スタンド」は十分な分解能である0.1μNの測定精度を持つことが分かったが、タングステンフィラメントから発生する輻射熱の影響があってゼロ点ドリフトが問題となった。今年度は新たにシャッター開閉機購を有した計測系(熱の影響が出る前に短時間で推力測定を完了する)を構築することで問題の改善を図り,その結果得られた推力は300Wで0.2μN,パワー変換効率としては20%程度であることが判明した。一方、全く別の光源として、タングステンフィラメントの替わりに、最大出力100Wで波長0.9μmの半導体CWレーザーを製作した。その結果,半導体レーザーにて出力80Wまでを達成,今後はこれを用いてシャッター機構を有する改良型「ねじり式推力スタンド」にて推力を評価することになった。
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