研究概要 |
宇宙用機器は常に高性能化と小型化を指向しており,高温,高電圧機器の絶縁および冷却を考えた場合,宇宙用機器の絶縁冷却システムとして同時に解決されることが望ましい.そこで本研究では,フッ素系不活性液体の電気絶縁性と熱伝導性を最大限に利用して,実際の宇宙機に応用可能な絶縁冷却温度制御システムを構築することを目的とした. 昨年度の研究において,フッ素系不活性液体の絶縁性の検証と簡易的なシステム同定による解析モデルの導出は既に実施したので,今年度はシステムに加える熱量や流量を変化させてより厳密なシステム同定を行い,その関係から絶縁冷却システムの双線形解析モデルを導出し,理論値と比較することでその妥当性を確認した.また,フッ素系不活性液体を動作流体とした絶縁冷却システム実験装置を用いて,高温高電圧電子素子を模擬したヒーターの絶縁冷却温度制御実験を行った結果,所望の温度に制御できることが確認できた.システムの実際の挙動は解析モデルを用いた数値シミュレーション結果と良く一致しており,解析モデルの妥当性が検証できた.さらに,実際の宇宙機の高電圧機器をサイズや構造の面で模擬した実験装置を製作し,その装置を用いてシステム同定実験を行った.本装置は非線形性の強いシステムであるが,導出した解析モデルを用いて双線形システムの制御則を構築し,絶縁冷却実験を行った結果,所定の温度に制御できることが確認できた. 以上により,本研究が提案するシステムが宇宙機システムへ応用可能であることを示した.
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