研究概要 |
地球温暖化抑制のため、火力発電所等の排ガスから分離・回収したCO2を,地下深度1km前後にあって,間隙率の比較的大きな岩石からなる地下帯水層に圧入して溶解・固定化するという方法が検討されている.また,この方法では,浸透性が小さい天然の構造性バリアー,すなわちキャップロックが存在することを前提とし,その下部にCO2を圧入することになっている.しかし,地殻活動が盛んな日本では,そのように健全で広大なキャップロックがある場所は限られている.そこで本研究では,現位置反応法で形成した人工バリアーによってキャップロックの欠損部を覆い,また,断層等の移動経路を遮断してCO2の漏洩を防止するという,従来にない新技術を開発する.この目的を達成するために本年度は,以下のことを実施した.まず昨年度の実験結果を再検討した結果,模擬岩石の浸透率を計測する際の差圧の測定方法に問題があって計測値に大きな誤差を含む可能性のあることが判明した.そこで,高圧環境下で作動する高精度の差圧計を導入し,さらに,模擬岩石内部の流れが均一になるような工夫を新たに加えることで,その問題点を解決した.また,CO2と反応する溶液(反応性グラウト)の新たな候補として水ガラス溶液を用いて実験を行った結果,昨年度に用いたCa (OH)2水溶液よりも粘性が十分小さい上に現位置反応による浸透性低下量も大きく,実用に十分適するものと判断された.
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