研究概要 |
本年度は,まず昨年度に建設したレーザーイオン源と誘導線型加速器からなる大強度パルスイオンビーム発生装置からビームを取り出し,ビーム電流測定及びビーム集束試験を行った.ポリエチレンターゲットをレーザーで照射して陽子ビームの発生を試みたが,炭素イオンが混合して陽子ビームの純度が低下することが分った.またポリエチレンは低融点のためレーザーの照射により表面に凹凸が生じ,短時間でビーム出力が著しく低下することが分った.そこで,レーザー照射に対して耐久性があり,長時間安定にビームを発生できる黒鉛ターゲットを用い,炭素イオンビームを照射することにした.イメージングプレート及び感熱紙を照射してビーム径の測定を行い,同心球状電極のほぼ中心でビームが集束することを確認した.レーザーの照射強度を調整し,焦点でビーム電流密度約1A/cm2を得た.次に表面を鏡面研磨したオーステナイト系ステンレス鋼試料にビームを照射し,表面層の剥離除去実験を行った.積算照射量の増加とともに表面の黒化が見られた.結局,固溶限を超える濃度の炭素原子を注入することに成功した.しかし表面の剥離は観察できなかった.照射後試料に10MeVの35Clビームを入射角30度で照射し,弾性反跳検出分析(ERDA)法により打ち込まれた炭素原子の深さプロファイル測定を試みた.一次イオンビーム,試料標的及び荷電粒子検出器等の配置に基づく運動学的計算との比較を行った結果,深さ60nmをピークとして炭素イオンが注入されていることが明らかになった.絶対濃度もビーム照射量からの計算結果と10%程度の誤差範囲内で一致した.ピークの深さ60nmはモンテカルロ計算コードTRIMによる計算結果の半分程度であり,この差は試料表面の粗さに起因することが分った.
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