研究概要 |
本研究では,高温(1400℃)で進行する反応性セラミックによる2段階水熱分解サイクル反応を,半導体の光化学的効果を他金属ドープで反応性セラミックに添加するという手法で低温化する試みを行った。これを研究代表者が見出した水熱分解性セラミック「Fe^<2+>-Fe^<3+>含有型立方晶ジルコニア」で検討した。すなわち,反応性セラミックを反応デバイス化し,これに擬似太陽集光を直接照射して行う活性試験と,反応性セラミックの固体化学的・光触媒化学的な構造解析によるアプローチを併用して,低温水分解性セラミックの開発を行った。19年度は下記の研究成果を得た。 (1)1400℃における水素発生量増大化の検討:デバイスへの反応性セラミック担持量を増大することを目的に,スピンコート法へ担持法を変更した。担持プロセスを大幅に簡便化でき,鉄酸化物を約10wt%担持量するために数十回を要していた繰り返し担持を数回で到達できるようになり,担持量を増大させることが容易になった。1100-1400℃の水分解試験の結果,反応性セラミック粉末試料の熱活性のみの場合と比較して1.2倍に水分解活性が向上することが見出された。粉末試料の方が反応デバイスと比較して反応表面積が大きく,高活性が得られるはずであるが,逆の結果が得られたことは,期待通りに光触媒効果が関与して活性を向上させていることを示唆している。 (2)低温化の検討:担持量を増大させたデバイスでは水素発生量は増大したが,焼結が起きやすくなり反応温度は1200-1500℃とむしろ増大した。一方,鉄酸化物の粉末試料ではあるが,予めNiとMnをドープすると1400℃の反応活性が増大することが見出され,この手法で1400℃以下の反応活性も向上できると考えられる。
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