研究概要 |
TOR(target of rapamycin)は栄養源,成長因子に応答して細胞活動を制御する主要因子である。TORは酵母からヒトまで広く真核生物に保存されている。TORを特異的阻害剤であるラパマイシンで不活性化すると栄養源飢餓応答が惹起される。TORは細胞成長のみならず,癌,肥満,寿命,記憶の制御も行っており,ラパマイシンは抗癌剤,免疫抑制剤として期待されている。しかし,TORが細胞にどのような影響を及ぼすかの全体像は已然不明である。 申請者は,TORがDNA複製に必要である事をすでに見出していたため,この分子機構を解析を進めた。その結果,TORをラパマイシンで阻害すると,DNA複製に必要なMCM複合体のコンポーネントが特異的に減少する事を見出した。この減少が,タンパク質の分解促進を伴った結果である事,その分解はユビキチン,プロテアソーム依存的である事も併せて見出した。更に,TORを不活性化することで,MCM以外にもDNA複製に必須のタンパク質の中に減少するものが見出された。以上の事から,TORの活性は,正常にDNA複製を行うために必須である事,それはDNA複製因子の維持に必要である事が判明した。 これらの結果の一部は,2007年度の日本分子生物学会生化学会合同大会(横浜)において報告した。
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