研究概要 |
ニホンナシのみつ症は, 果肉部が水浸状となり日持ち性の低下や果肉の褐変をもたらし, 商品価値を著しく低下させる重大な生理障害である. これまで, みつ症の発生に関する遺伝子についての報告は無かったが, 前年度までに本研究において, みつ症感受性品種'豊水'果実のcDNAサブトラクションを行い, みつ症組織および健全組織に特異的に発現する遺伝子群の部分配列を明らかにした. 本年度は, みつ症への関連が疑われる同遺伝子群について, リアルタイムPCR法を用いて品種や果実の発達段階の違いによる発現量の変化を網羅的に解析した. その結果, みつ症組織で強発現するメタロチオネイン遺伝子は, '豊水'以外のみつ症感受性品種においても未熟果の段階で発現が上昇することが明らかとなった. また, メタロチオネイン遺伝子の部分配列からプライマーを合成し, ゲノム上での配列を決定したところ, 本遺伝子には約100bpのイントロンが挿入されていることが明らかとなった. さらに, インバースPCR法によって, 本遺伝子の全コード領域を明らかとし, 取得した配列に基づいてメタロチオネインタンパク質のアミノ酸レベルでの分類および機能の推定を行った。その結果, 本遺伝子がコードするタンパク質は, メタロチオネインのなかでもタイプ3に分類され, バナナの果実においては成熟に伴って発現が高まることが明らかとなった. 本研究において, みつ症に関連する可能性が高い遺伝子がはじめて特定されたことから, 今後, 同遺伝子とみつ症果の発生との関わりをより詳細に解明することで, みつ症果発生の遺伝的メカニズムの解明が期待できる.
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