研究概要 |
昨年度の研究で,アマエビ殻から脂溶性タンパク質-Pb CP類-混合物を得て,過去の研究で明らかにしているPb CP-8.3,12.7,13.4の3種に加え,[S^<51>]PbCP-12.7,[V^3,S^<51>Pb CP-12.7,[L^3]Pb CP-13.4,[L^3,S^<65>]PbCP-13.4の4種を見出すことができた。本年度は,PbCP類の酵素分解物のキチンに対する吸着能を調べた。その結果,Pb CP類の繰り返し配列を含むペプチド断片が吸着能を持つことを明らかにできた。 一方,昨年度,高脂溶性タンパク質がどのような節足動物種に存在するかを調べる目的で,シャコの殻を集めて有機溶媒抽出したが,目的とするキチン吸着能を持っ高脂溶性タンパク質を見出すことができなかった。そこで,本年度は別種の節足動物として,イセエビ類の殻について探索し,メタノールー塩化メチレン混液抽出可能で,キチンに吸着し,酸性の水で溶出可能な高脂溶性タンパク質を見出すことができた。このタンパク質について質量分析,アミノ酸配列解析,酵素分解を適用することにより,その全一次配列を明らかにすることができた。この結果は,アマエビ以外のエビ類にも高脂溶性タンパク質が存在することを証明するものである。しかしながら,材料となる生物種が異なると,類似の高脂溶性タンパク質といえども,キチンからの溶出挙動は微妙に異なることが明らかとなった。 今後,今回の研究で明らかとなった知見に基づき,高脂溶性タンパク質の応用法を開発していくと共に他種の節足動物表皮にこの種のタンパク質が分布するか否かを調べ,その生物学的役割を調べる必要があると考えている。
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