研究課題
萌芽研究
ブナとミズナラの光学顕微鏡写真の結果から、高CO_2処理ではブナとミズナラの葉の柵状組織が発達していた。成長と防御はトレードオフの関係であることから防御に投資できる分は限られるために、被食防衛物質は葉の内部全体に均一に分布させるのではなく、重要な器官や組織に分布させる効率のよい防御を行っている。予想では、CO_2濃度が高まると二次代謝産物量が増え、被食防衛物質の量も増加することによって防衛物質を余分に葉内により広く分布させることができると考えていた。ブナでは高CO_2処理区で被食防衛物質が表皮細胞だけでなく、柵状組織にも顕著に局在していたが、これは高CO_2処理によって二次代謝産物が増加し、防御物質をより多く生産することで、葉の全体へ広く局在させることができるようになったためと考えられる。事実、定量分析の結果からは特に縮合タンニン量が高CO_2処理によって増加していたことと対応していた。ミズナラではCO_2処理と窒素付加による局在への影響は見られなかった。しかし、これらの樹種は比較的遷移後期に出現する樹種であり、光合成産物を貯蔵してから翌年以降の成長へ回す特徴を持つ。このため1年目では影響への応答が現れにくいために変化が見られなかったと考えられる。ブナとミズナラでLMAの値が高CO_2処理によって増加する傾向が見られたが、ホオノキとウダイカンバではほとんど差が見られなかった。ブナとミズナラのLMAの増加は、顕微鏡観察の結果から柵状組織の発達に関係していると考えられる。LMAは葉の堅さと対応しているので、ブナとミズナラでは高CO_2処理によって葉の物理的防御が高まったと考えられる。また、窒素付加による影響はほとんど見られなかったが、ブナで施肥区よりも対照区でLMAが高くなる傾向が見られた。
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