研究概要 |
本年度は昨年度に引き続き,高騒音環境にある農業施設内で作業者の健康を守り,危険から回避するため作業者同士のコミュニケーションを行えるシステム作りを行った。昨年度の実験の結果からは,ほぼ予想通りの雑音低減が達成された。しかし,TVカメラで作業者の位置を検出したため,限られた視野での仮想低雑音空間であったこと,ならびに作業者の動きにより誤差が大きくなる等の問題が発生した。この作業者の位置検出システムが満足のいく結果であれば,さらにキーワード認識実験に移行する予定であったが,この位置検出システムは,本萌芽研究の根幹に関わる重要な要素であることより,本年度は新たに「スペクトル拡散法」を改良した手法に着手した。 本システムはスピーカ2台,マイク1個をそれぞれ接続した2台のWindows PCで構成される.PC1で1023chipのM系列を3種類作成し,100Hz〜8kHzのBPFに通したものをサウンドカードから同時に出力する.1つはトリガ用として電気信号のままPC2のR端子に直接入力し,2つは測距用として2m間隔をあけて配置したスピーカA,Bから出力し,測定対象となるマイクからPC2のL端子に入力される.トリガ用M系列音の自己相関ピーク位置と測距用M系列音の自己相関ピーク位置の差から各スピーカからの音波飛行時間を求めることで各スピーカからの測定伝播距離を求めた.その後,既知のスピーカの位置とにより測定座標(cm,cm)を求めた。スペクトル拡散音による位置測定法の静かな環境での測定精度は誤差2cm以内である。このことを基にして,実際に,カンキツ共同選果施設(騒音の音圧レベルが82dB(A)である宇和青果農協味楽共選場)において実験を行った。その結果,本方法を用いた場合には,周囲の騒音と同じ音圧レベルのスペクトル拡散音を出力した場合,測定距離の限度は約4.5mとなることが明らかとなった。これより,TVカメラを用いたシステムよりも有利であることが知れた。
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