研究概要 |
私達はニワトリの卵に母性グレリンが移行して胚の発達の調節に関与する可能性を追究している。これまでに,(1)グレリンは卵管と卵胞【顆粒層でも産生されて卵内に入り,その濃度は卵白より卵黄で高いこと,(2)卵黄と卵白のグレリン濃度は艀卵5日まで変化しないこと,(3)初期胚にグレリン受容体遺伝子が発現することを示した。(3)グレリンが胚の発達に関与する可能性を検討するために,グレリン受容体(GHS-Rla)のアンタゴニストであるD-Lys^3-GHSR6または抗グレリン受容体抗体を孵卵前の受精卵の卵黄または卵白中に投与して,胚発達を形態学的に評価したが,有意な影響は認められなかった。本年度は,受精卵や胚細胞にグレリンを作用させて,胚発達やが胚細胞の増殖に及ぼす影響を解析した。孵卵前の受精卵にグレリンを投与し,孵化後のヒナの形態,神経や内臓の組織,行動(神経機能に及ぼす影響)を解析したが,有意な影響は認められなかった。これらのヒナのグレリン産生機能と感受性への影響を解析するために,腺胃においてグレリンおよびその受容体の免疫染色を行ったが,陽性細胞の出現に影響は無かった。一方,胚細胞を採取して培養し,卵内のグレリンが存在しない条件で,グレリンが細胞増殖に及ぼす影響を解析した。その結果,グレリンは胚細胞の増殖を有意に促進することが明らかとなった。このことから,鳥類では母性グレリンが卵へ移行し,胚細胞の増殖を調節することにより,胚の発達にに関与する可能性が示唆された。
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