動脈硬化の病巣に集積するマクロファージのモデルとしてマウスから単離した腹腔マクロファージにリポソームを添加し、泡沫化を引き起こした。この泡沫化に伴い、通常増殖性の見られないマクロファージが増殖性の高い細胞へ形質を転換することを見出した。そこで次に、この形質転換を引き起こす遺伝子を探索するため、DNAマイクロアレイにより遺伝子発現変動を経時的に解析した。その結果、リポソーム添加前と比較して、発現量が3倍以上となる遺伝子を173個、8分の1に低下する遺伝を181個同定した。その中から更に、分泌蛋白質あるいは膜表面蛋白質に着目し遺伝子の絞り込みを行い、RT-PCR法によりリボソームを添加後のマクロファージの遺伝子の発現上昇を確認した結果、5個の遺伝子において有意な発現増加が確認した。更にこれらのターゲット蛋白質に対する抗体を作成し、蛋白レベルでの発現上昇を調べたところ、増殖性の高い細胞において発現上昇が確認された。 次に、これらの遺伝子が実際の動脈硬化巣で発現していることを確認するため、動脈硬化モデルマウスであるアポEノックアウトマウスにおける発現を調べた。コレステロール負荷食を与え動脈硬化巣を引き起こしていることを確認後、レーザーキャプチャーマイクロダイセクション法により動脈硬化巣を単離し、RT-PCR法により発現を検討した。この結果、病巣部においても高発現していることが分かった。
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