研究課題
萌芽研究
G蛋白質共役型受容体をはじめとする細胞膜上の受容体が刺激を受けた後に、細胞内に移行する現象はエンドサイトーシスと呼ばれている。この経路は主にクラスリン被覆小胞を形成して起きる。クラスリンは、クラスリン被覆小胞を形成して進行するエンドサイトーシスに中心的な役割を果たしている蛋白質である。クラスリンは分子量が191kDaの重鎖と30 kDa弱の軽鎖からなり、トリスケリオン(三脚巴構造)をとっている。クラスリンは分子量が大きいため、エンドサイトーシス以外の細胞応答にも関わっていることが推定されている。根拠となるのが、クラスリン重鎖の結合するクラスリンボックスと呼ばれる特殊なアミノ酸配列である。我々は、受容体の調節機構を解析する過程で、アゴニストの結合した受容体を選択的にリン酸化する受容体キナーゼ2(GRK2)がクラスリンボックスを持っていること、またクラスリンボックスはGRK2と受容体との相互作用には必要でないにもかかわらず相互作用した後のGRK2活性化に必須な役割を果たしていることを示した。クラスリンボックスの配列を持つ蛋白質を検索したところ、プロテインキナーゼC、カルモジュリンキナーゼ、ジアシルグリセロールキナーゼにも含まれることが明らかになった。そこで、HEK293細胞にプロテインキナーゼCとレポーター遺伝子を発現させ、クラスリン重鎖の有無でレポーター遺伝子の発現が影響されるか検討した。しかしながら、レポーター遺伝子の発現が弱く、また一貫した結果が得られなかった。GRK2の制御とは異なり、プロテインキナーゼCやジアシルグリセロールキナーゼは細胞膜に移行した後、リン脂質Ca^<2+>によってエフェクター分子の活性を変えるほど十分活性化されるのかもしれない。また、カルモジュリンキナーゼはCa^<2+>によってすでに最大レベルにまで活性化されているのかも知れない。
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