研究概要 |
本実験の目的は,ES細胞を利用してアルツハイマー病の遺伝子改変モデルサル作成を試みることである。昨年度は,最適なコンストラクトの作製と,サルES細胞への遺伝子導入技術の確立を行った。本年度は,まず,ヒトのアミロイド前駆体タンパク(APP)遺伝子プロモーターと変異APP遺伝子より構成されるコンストラクトを作製した。そして,昨年度の研究で最も良い成績を収めたリポフェクタミン法により,サルES細胞に遺伝子導入した。っいで,抗生物質G-418を用いて,ヒトAPP遺伝子の導入されたサルES細胞を選別した結果,安定してAPPタンパクを発現するES細胞株を2株樹立した。 一方,共同研究者の鳥居は,核移植法の確立を試みて実験を行い,サルの核移植クローン胚の作製に成功した。そこで,現在,上記のES細胞株を用いて,核移植法によるアルツハイマー病モデルサルの作製とキメラサル作製に着手した。なお,神経難病の原因遺伝子を導入したカニクイザルES細胞の核をカニクイザルの除核した未受精卵に核移植し,活性化刺激を与え2〜4細胞期胚になったことを確認後,これを排卵2-3日目のレシピエントのカニクイザルの子宮あるいは卵管に移植する予定である。 サルは齧歯類に比べ妊娠期間も長いので,本研究計画が順調に推移したとしても,実際の誕生はまだ先になる。本研究の成果の一部を国際学術誌で報告した。なお,本研究計画は,半数の外部委員を加えた動物生命科学研究倫理委員会で審査を受けて,承認されている。
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