研究概要 |
目的:培養由来スボロゾイトを生ワクチンとして用いることを想定し,培養由来スポロゾイトの感染性と,媒介蚊による感染吸血に対する感染防御効果について検討した。 方法:ネズミマラリア原虫(Plasmodium berghei)感染BALB/cマウスより採取した血液を出発材料としてオオキネート培養を行い,精製したオオキネートをオオシスト培地に懸濁して培養を開始した。培養25日目のサンプルを回収してC57BL/6マウスの腹腔内へ注入し,以後マウスの末梢血における寄生赤血球率をギムザ染色にてモニターした。発症しなかったマウスについてはP.berghei感染蚊による感染吸血を行い,発症の有無を検討した。 結果:3回の独立した培養実験を行ったが,培養25日目のサンプルを腹腔内に注入されたマウスは,いずれも虫血症を生じなかった。感染蚊による感染吸血の結果,全ての培養スボロゾイト接種マウスが発症した。寄生赤血球率の推移から1% prepatent periodを算出して比較したところ,スポロゾイト接種マウスでは6.3±1.1days(n=3,第1回培養),6.2±0.6days(n=2,第2回培養),6.2±0.5days(n=2,第3回培養),無処置マウスでは5.4±0.2days(n=3)であり.わずかながらスポロゾイト接種群での発症遅延が認められた。吸血12日後の生存率はスポロゾイト接種群で57%(4/7),無処置群で33%(1/3)であった。 考察:現在の培養条件で形成されたスポロゾイトには感染性は認められないものの,マウスへの接種によってわずかながら感染防御効果が認められた。今後,各種培養条件と感染性および感染防御の関係について詳細に検討を行い,スポロゾイトの感染性や免疫原性を規定する因子を同定することで,マラリア発症阻止の新たな手段の開発につながるものと期待される。
|