研究概要 |
本研究は,今後医療分野での応用が期待される電子タグを,注射投与と同様に取り違えによる医療事故が大きな問題となる輸血関連インシデント防止に応用すべく,システム開発と電子タグ読み取りによる輸血製剤への影響を調査する事を目的とした. 輸血認証システムは,既に本院で注射認証に使用している電子タグリーダー内蔵携帯端末(PDA)を利用して開発した.タグの周波数帯は13.56MHzである.開発したシステムは,輸血部門での製剤受け入れ情報を輸血管理システムで管理し,払い出し時に電子タグを貼付,病棟では輸血実施時にPDAで電子タグを読み取り,無線LAN経由で病院情報システムの輸血オーダーと照合する.この事で,実施時の取り違えに対してリアルタイムに警告する事が可能となる.平成18年10月以降継続して本システムを実運用に供し,輸血製剤取り違え防止の有効性を確認した. 問題点としては,電子タグを貼付する輸血部門の業務負担が増加する事と,新鮮凍結血漿バッグ表面の凍結のために接着剤では電子タグラベルの貼付が不可能な事である.前者は払い出し量がそれほど多くないため運用でカバーし,後者はバッグ側方スリットにラベルを通して装着する事で対応した.また,赤血球製剤,凍結血漿製剤いずれにおいても注射薬同様の距離で読み取り可能で,13.56MHz帯タグの十分な可用性が確認できた. 輸血製剤への影響調査は,期限切れ赤血球製剤にリーダーから電磁波を照射し,コントロール群との比較を行なう事で調査した.使用した周波数帯は13.56MHzの他,UHF帯も用い,各々につき照射前,照射直後,1日後,3日後,7日後の血算,生化学,遊離ヘモグロビン値を比較検討した.照射時間は通常使用を想定した2秒×5回照射および,10倍負荷として100秒連続照射の2系で行なった.結果は,いずれの周波数帯,照射時間においても有意な差は生じなかった.
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