研究概要 |
本研究の目的は、がん罹患後の経過のなかで様々な問題に遭遇するがん患者に対する患者図書館を中心とした情報支援サービスのあり方を検討することである。がん患者に優しい「情報提供・情報発信」とするため、がん患者が実際に悩んだり困ったりしていることを基点として、分類には全国がん体験者7,885名の悩みの実態調査(2003年度)結果を体系的に整理し、一万件余りに集約した悩みデータベースの分類に使用している4階層の静岡分類を利用した。 静岡がんセンター患者図書館に所蔵している医療福祉関連資料のなかで雑誌を除き、がんに関連した書籍952冊を抽出した。具体的な内容を示す指標として目次を用いて書誌情報と紐付けして分解しラベルとした。このラベルを静岡分類(Ver.2)と照合し、資料情報の傾向を検討した。 その結果、6,796件のラベルを抽出し、静岡分類の大分類ごとの順位をみると、第1位は、診断・治療3,393(49.9%)、第2位は症状・副作用・後遺症774(11.4%)、第3位は緩和ケア718(10.6%)で、ラベルのほぼ半分が診断・治療・病期・症状等に関する情報であった。一方、少ない情報としては、就労・経済的負担、医療者との関係、在宅療養などの日常生活・社会生活(関係性を含む)を含む情報であった。これらの情報は、制度との関連で頻回な情報更新が求められる情報、明確な1つの回答ではなく利用者の背景に沿ったアセスメントを必要とする情報等の特徴を含んでいた。 また、同図書館4,5年間12,232件の医療福祉関連資料(がん以外含む)貸出状況の内、上位300タイトル(6,872件)をみていくと、一番多いのは診断・治療関連(部位別がん資料、治療関連など)109タイトル2,510件(36.5%)、続いて闘病記・エッセイ・ドキュメンタリーが104タイトル2,389件(34.8%)であった。闘病記等は、所蔵資料全体のタイトル数でいえば、14.6%に過ぎないが、狭義の医学情報(客観的な情報)とともに主観的情報のニードは高いことが示唆された。
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